武藤彩未、 異例のアコースティックライブで魅せた圧倒的な歌唱力

4月にアルバム「永遠と瞬間」でソロデビューをした武藤彩未さんが、6月10日に自身の苗字にかけ、”610の日LIVE 「A.Y.M. Ballads」” と銘打ったスペシャルライブを渋谷duo music exchangeにて行った。 今回のライブは、4月29日の渋谷・O-EASTでのデビューライブや、同じく幕張メッセで行われたメイド・イン・ジャパンのポップカルチャーを体感する大型エキスポ「KAWAii NiPPON EXPO」で魅せたダンス/エレクトロによる打ち込みサウンドによるライブとは異なり、アイドルのLIVEとしては異例のアコースティック編成で行われた。これまでとは違った試みを行うということで、通常よりも客席との距離感が近い会場が選ばれたこともあり、チケットは発売と同時に立ち見席まで完売し、オークションサイトに高値で出品されるなどプレミアチケットとなった。 1980年代のソロアイドルの楽曲に心酔する1996年生まれの武藤さんが、現在18歳になるまでに辿ってきた楽曲を歌う、過去から現在、そして未来は繋がっているという普遍性を感じさせるライブとなった。それを象徴するように、カラフルな蛍光色の毛糸が会場中に張り巡らされ、時代を超えてもすべてが繋がっているというメッセージが込められ、さらに天井にはA.Y.Mという彼女の名前を表した糸文字が表現されるなど心憎い演出が施されていた。 まるでビルボードやブルーノートを彷彿とさせるステージ空間に白を基調としたボタニカル柄のワンピースで登場した武藤さんは「今回は大人っぽくお送りしようかな」と語り始め、1曲目から新曲「明日の風」を披露。透明感と上品さをまとった伸びやかな歌声は、改めて武藤彩未の歌い手としての圧倒的な歌唱力の高さを感じさせた。続けてアルバム「永遠と瞬間」から「宙」「Seventeen」を披露。本来はエレクトロ/ダンスサウンドによる打ち込みでアレンジされた楽曲をいつもとは全く違ったアレンジで、楽曲が備えている素材そのものを楽しむように歌っていた。 中盤で披露されたバラード曲「とうめいしょうじょ」ではセンチメンタルかつエモーショナルに歌いあげ、会場にいたファンを彼女の歌声が優しく包んだ。そして後半で披露された「女神のサジェスチョン」「A.Y.M」ではオリジナルとはまた違うビート感の中で、バックを支えるミュージシャンの跳ねるようなアンサンブルを体で感じながらオリジナルとは一味違う魅力を見せつけた。 また今回のスペシャルライブにちなんで、彼女が大事にしてきた曲をカバーで披露。敬愛する松田聖子さんの「Eighteen」は現在18歳の武藤さんが歌うことで、「時代を超えて愛されるアーティスト」になりたいという彼女の想いが会場中に広がり、また初代生徒会長として在籍したアイドルユニット「さくら学院」で自身の卒業ソングとなった「FRIENDS」をソロとして初めて歌い上げ、以前から彼女を知るファンから大きな喝采を浴びた。その他にも川島さんの「大丈夫だよ」、昨年、会場限定盤としてリリースした「LIVE DNA1980」に収録されている浅香唯さんの「セシル」の計4曲を披露した。 声、歌詞、そして歌そのものを力強く表現する武藤さんはライブを通して日々進化し、歌い続けることで未来と過去を旅するタイムトラベラーとなっていくに違いない。彼女が歌うことで、過去の楽曲であってもクラシカルなものを懐かしむだけではなく、その楽曲の持つ強い普遍性が時代を超えて感じられるものに昇華されていく。アンコール含め全15曲が披露されたこのステージでは一流ミュージシャンが彼女を支えたが、それはさらに彼女の声や歌を際立たせ、どんな編成や演出であろうとも、武藤彩未さんの存在と歌声が中心にあることを改めて感じさせたライブでもあった。 アンコールでは7月に予定されているサマーライブの詳細が発表され、これまで発表されていた3本に加え、8月1日に渋谷Club Quattroでの追加公演の開催が決定。公演タイトルにトライアルという文字が入っていることから、本ライブにおいても何かしらの新たな試みが行われそうだが、今回も少数キャパのライブということもあってチケット争奪戦が予想される。注目の一般発売は7月5日(土)。 ライブ情報 武藤彩未 SUMMER TRIAL

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アーバンギャルド「鬱くしい国」浜崎容子・松永天馬インタビュー

  「少女」を描き続けてきたアーバンギャルドがついに「日本」を描く。前作「ガイガーカウンターカルチャー」から1年8ヶ月ぶりとなるアルバム「鬱くしい国」がついにリリースされる。ミュージックビデオが公開され話題を呼んだ「さくらメメント」、自撮りをテーマとした「自撮入門」、大槻ケンヂが語り部として参加した「戦争を知りたい子供たち」など名曲づくしの本作についてフロントマンのお二人・浜崎容子さんと松永天馬さんにお話を伺った。 取材・テキスト:MISUMI 「日本」をテーマにしたアルバム「鬱くしい国」   ―今回のアルバムタイトルですが「鬱くしい国」ととてもインパクトのあるものになっています。このタイトルは阿部首相の「美しい国」のもじりだと思うんですけど、全体的にすごく日本を感じるアルバムになりましたね。 松永天馬 前作は「ガイガーカウンターカルチャー」というアルバムを出しましたが、日本の現代社会の問題を突いたような内容だったんですね。それの延長線上として今作は「日本」をテーマにしたアルバムになっています。2012年の年末と2013年の夏の間に「トゥールーズ・ゲーム・ショー」と「ジャパン・エキスポ」というイベントで、フランスにてライブをやらせていただく機会がありまして、そのときに日本のポップカルチャーというものが世界でどう消費されているかとか、あるいはどういうふうに興味を持たれているかということを目の当たりにして、自分たちの表現に自信をつけたというか、もっとデフォルメして出してもいいんじゃないかと思ったんです。アーバンギャルドって特にこれまで「日本がテーマです」とか言ったことはないんですけど、「少女」をずっとテーマにしてきたんですね。日本って資本主義がある意味アメリカ以上に発達した国だと思うんです。アイドル産業を見るまでもなく「少女」というのが資本主義というものの重要なアイコンになっている。アーバンギャルドが「少女」をモチーフにしてきたことっていうのもこれまであまり深く考えてきたことはなかったんですけど、「日本」を描きたかったからなのかなと最近思って。それを思うと同時に、ジャケットをお願いするのはもう会田誠さんでいきたいなというのは自然な流れでしたね。 「鬱くしい国」ジャケット写真 ―学生時代のころから会田さんの作品はリアルタイムで見ていたんですか? 松永 もちろん。今回のジャケットに使用させていただいた「群娘図’97」は会田さんの作品を見て一番衝撃を受けた作品なんです。会田さんは、自分のアイデンティティを掘り起こしていく上で日本という国家に突き当たって、その表現手段として「少女」を描いていると思うんです。「群娘図’97」は1997年のコギャルとセーラー服の女の子の姿を描いているわけですけど、コギャルというのがいわゆる「援助交際」をはじめとして、まさに消費されることに「少女」が自覚的になった最初だったはずで、そういう意味でもこの絵っていうのが象徴的なんじゃないかなと思っています。ちょうどこの絵が17年前に描かれていて、この絵が描かれたころに生まれた子たちが今JKになっているっていうのも僕の中ではちょっと熱いですね(笑)。 ―その当時、90年代のカルチャーから影響を受けたりとかってありました?エヴァンゲリオンや地下鉄サリン事件など90年代は転機となるようなものがたくさん出た時期でもありますよね。 松永 90年代は「エヴァンゲリオン」「ラブ&ポップ」みたいなものから、音楽でいえば渋谷系ですかね。90年代のカルチャーって最近ようやくリバイバルしてきていますよね。 ―20年周期説みたいなものありますからね。ウェブの画像とかを見ていても90年代っぽいのが流行っていたりとリバイバルを感じます。 松永 あとは「Spoon.」っていう森ガールで一世を風靡した雑誌も、去年くらいから「90年代や90年代生まれの女子にファクトしていきます」っていうことを宣言していますよね。90年代ってのはどういう時代かというと、DJ文化に代表されるように過去というものをコラージュして新しいものをつくるということに意識的になった最初の時代だったんじゃないかと思います。渋谷系にしても60年、70年代のものを引っ張ってきて組み合わせて、新しい音楽にするっていうのはフリッパーズ・ギターにしても、ピチカート・ファイヴにしてもやっていたことで。だから、僕の中では90年代は10代を過ごしてきた時代であると同時に、ザッピングをしてオリジナリティを獲得する様式を学んだ場所なのかな。僕の下の世代、Youtubeの世代になっちゃうと、たぶん様式が様式ですらなくなって、もう細切れになっているんだと思うんですよね。僕の時代っていうのは、ぎりぎり90年代の恩恵を受けた時代なので、過去を照らし合わせながらつくっている実感があります。 ―それは作曲する上でも作詞する上でもいえますか? 松永 そうですね。アレンジとかで参照しているものもありますし。ただ、作曲するときは、マニアックなものを引っ張ってきてもポップな感じキャッチーな感じに最終的には落とし込むように意識はしています。けっこうワンマンバンドだと思われがちなんですけど、ほかのメンバーも別々のバックグラウンドがあって、きわめて民主主義なんですよ。ほかのメンバーのカラーが打ち出された曲もありますし、浜崎さんにぼろくそにけなされる事もありますし(笑)。例えば90年代でいえば、彼女なんかは僕とはぜんぜん違うバックグラウンドを持っていると思うんです。 浜崎容子 わたしは実は渋谷系をリアルタイムで聴いていないんですよ。渋谷系を聴き始めたのは20代になってからだし、エヴァンゲリオンを見始めたのも20代になってからなんですね。リアルタイムで90年代を生きていたはずなんですけど意外と後追いなんですよ。 松永 でもよこたんも当時はまっていたものが今回のアルバムに繁栄されているよね、浅倉大介さんとか。 浜崎 そうそう。当時浅倉さんの音楽とかが好きだったんです。 松永 僕は逆にそういう要素はまったくないんです。だから、ほかのメンバーがそのへんの要素は引っ張ってきてくれているのかなと。

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