アーバンギャルド「鬱くしい国」浜崎容子・松永天馬インタビュー

 

「少女」を描き続けてきたアーバンギャルドがついに「日本」を描く。前作「ガイガーカウンターカルチャー」から1年8ヶ月ぶりとなるアルバム「鬱くしい国」がついにリリースされる。ミュージックビデオが公開され話題を呼んだ「さくらメメント」、自撮りをテーマとした「自撮入門」、大槻ケンヂが語り部として参加した「戦争を知りたい子供たち」など名曲づくしの本作についてフロントマンのお二人・浜崎容子さんと松永天馬さんにお話を伺った。
取材・テキスト:MISUMI

「日本」をテーマにしたアルバム「鬱くしい国」


 

―今回のアルバムタイトルですが「鬱くしい国」ととてもインパクトのあるものになっています。このタイトルは阿部首相の「美しい国」のもじりだと思うんですけど、全体的にすごく日本を感じるアルバムになりましたね。

松永天馬 前作は「ガイガーカウンターカルチャー」というアルバムを出しましたが、日本の現代社会の問題を突いたような内容だったんですね。それの延長線上として今作は「日本」をテーマにしたアルバムになっています。2012年の年末と2013年の夏の間に「トゥールーズ・ゲーム・ショー」と「ジャパン・エキスポ」というイベントで、フランスにてライブをやらせていただく機会がありまして、そのときに日本のポップカルチャーというものが世界でどう消費されているかとか、あるいはどういうふうに興味を持たれているかということを目の当たりにして、自分たちの表現に自信をつけたというか、もっとデフォルメして出してもいいんじゃないかと思ったんです。アーバンギャルドって特にこれまで「日本がテーマです」とか言ったことはないんですけど、「少女」をずっとテーマにしてきたんですね。日本って資本主義がある意味アメリカ以上に発達した国だと思うんです。アイドル産業を見るまでもなく「少女」というのが資本主義というものの重要なアイコンになっている。アーバンギャルドが「少女」をモチーフにしてきたことっていうのもこれまであまり深く考えてきたことはなかったんですけど、「日本」を描きたかったからなのかなと最近思って。それを思うと同時に、ジャケットをお願いするのはもう会田誠さんでいきたいなというのは自然な流れでしたね。

「鬱くしい国」ジャケット写真

―学生時代のころから会田さんの作品はリアルタイムで見ていたんですか?

松永 もちろん。今回のジャケットに使用させていただいた「群娘図’97」は会田さんの作品を見て一番衝撃を受けた作品なんです。会田さんは、自分のアイデンティティを掘り起こしていく上で日本という国家に突き当たって、その表現手段として「少女」を描いていると思うんです。「群娘図’97」は1997年のコギャルとセーラー服の女の子の姿を描いているわけですけど、コギャルというのがいわゆる「援助交際」をはじめとして、まさに消費されることに「少女」が自覚的になった最初だったはずで、そういう意味でもこの絵っていうのが象徴的なんじゃないかなと思っています。ちょうどこの絵が17年前に描かれていて、この絵が描かれたころに生まれた子たちが今JKになっているっていうのも僕の中ではちょっと熱いですね(笑)。

―その当時、90年代のカルチャーから影響を受けたりとかってありました?エヴァンゲリオンや地下鉄サリン事件など90年代は転機となるようなものがたくさん出た時期でもありますよね。

松永 90年代は「エヴァンゲリオン」「ラブ&ポップ」みたいなものから、音楽でいえば渋谷系ですかね。90年代のカルチャーって最近ようやくリバイバルしてきていますよね。

―20年周期説みたいなものありますからね。ウェブの画像とかを見ていても90年代っぽいのが流行っていたりとリバイバルを感じます。

松永 あとは「Spoon.」っていう森ガールで一世を風靡した雑誌も、去年くらいから「90年代や90年代生まれの女子にファクトしていきます」っていうことを宣言していますよね。90年代ってのはどういう時代かというと、DJ文化に代表されるように過去というものをコラージュして新しいものをつくるということに意識的になった最初の時代だったんじゃないかと思います。渋谷系にしても60年、70年代のものを引っ張ってきて組み合わせて、新しい音楽にするっていうのはフリッパーズ・ギターにしても、ピチカート・ファイヴにしてもやっていたことで。だから、僕の中では90年代は10代を過ごしてきた時代であると同時に、ザッピングをしてオリジナリティを獲得する様式を学んだ場所なのかな。僕の下の世代、Youtubeの世代になっちゃうと、たぶん様式が様式ですらなくなって、もう細切れになっているんだと思うんですよね。僕の時代っていうのは、ぎりぎり90年代の恩恵を受けた時代なので、過去を照らし合わせながらつくっている実感があります。

―それは作曲する上でも作詞する上でもいえますか?

松永 そうですね。アレンジとかで参照しているものもありますし。ただ、作曲するときは、マニアックなものを引っ張ってきてもポップな感じキャッチーな感じに最終的には落とし込むように意識はしています。けっこうワンマンバンドだと思われがちなんですけど、ほかのメンバーも別々のバックグラウンドがあって、きわめて民主主義なんですよ。ほかのメンバーのカラーが打ち出された曲もありますし、浜崎さんにぼろくそにけなされる事もありますし(笑)。例えば90年代でいえば、彼女なんかは僕とはぜんぜん違うバックグラウンドを持っていると思うんです。

浜崎容子 わたしは実は渋谷系をリアルタイムで聴いていないんですよ。渋谷系を聴き始めたのは20代になってからだし、エヴァンゲリオンを見始めたのも20代になってからなんですね。リアルタイムで90年代を生きていたはずなんですけど意外と後追いなんですよ。

松永 でもよこたんも当時はまっていたものが今回のアルバムに繁栄されているよね、浅倉大介さんとか。

浜崎 そうそう。当時浅倉さんの音楽とかが好きだったんです。

松永 僕は逆にそういう要素はまったくないんです。だから、ほかのメンバーがそのへんの要素は引っ張ってきてくれているのかなと。

―ギターの瀬々さんがもともとビジュアル系バンド出身とかでしたっけ。

松永 ギターはもともと90年代にビジュアル系をやっていた口ですね。ラルク、LUNA SEAとかまさにあの時代の。

浜崎 あとはMALICE MIZERとかですね、彼は。

―耽美系ですね。浜崎さんも聴いてました?

浜崎 わたしもどちらかというと耽美系のほうが好きでしたね。ずっとクラシックバレエをやっていたのもあって、普通の服でステージにあがるのが考えられなくてああいった衣装に惹かれました。友達に「これよこたん好きかもよ」と雑誌のKERAを渡されて、こういう世界もあるんだと驚いた記憶があります。東京とか原宿の文化を地方に住んでいたからぜんぜん知らなかったんです。そのころは、フレンチポップとかシャンソンとかもはまってましたね。

松永 テクノはテクノでも僕はどちらかというと、YMOがあってヒカシュー、P-MODEL、プラスチックス、とテクノポップ御三家からのテクノなんですけど、よこたんは浅倉大介からきてるんだよね。

浜崎 浅倉さんもそうですし、ケミカル・ブラザーズとかアンダーワールドとかプロディジーとかあのへんのテクノからですね。わたしはどちらかというとクラブ系の音楽が好きだったんです。

―わりと今もクラブ系もきいたりしますか?

浜崎 わたしワープ・レコーズが大好きなんです。いつもチェックしてますね。

 

生と死のあわいの部分を表現した「さくらメメント」、自撮りについて


―昔「セーラー服を脱がないで」のミュージックビデオで容子さんと都市夫の戦いがあったじゃないですか。アルバムに収録された新曲「さくらメメント」のミュージックビデオでは、その当時を髣髴とさせるシーンも出てきたりしていて、そういったところも見所だったかと思うんですけど、この曲はどんなふうに出来上がっていったんでしょうか?

松永 今活きの良い音楽ってなんだろうって考えたときに、まず海外ではEDMがあるわけじゃないですか。日本では何かというと、EDMがガラパゴス的に変化したボカロかアイドルソングなんですよ。「さくらメメント」は、ボカロとアイドルソングとEDMというのをとにかく過剰なまでに詰め込んでバンドサウンドで「やってみた」「演奏してみた」という感じの曲ですね。けっこうここ最近はAメロ、Bメロというものをはっきりつくって曲を出すようになっていたんですけど、今回は久しぶりにそういうものを忘れてちょっと過剰で複雑な感じで構成してつくってみました。けっこうメンバーからはくどいといわれましたけど(笑)。でもそこらへんは意識的にやってとにかく味付けの濃いものをつくろうと思いました。

―ミュージックビデオでこだわられた点はありますか?

松永 ミュージックビデオはここ最近は僕がアイデアを出してMV監督につくっていただいているんですけど、今回僕が一番最初に出したコンセプトは紅白幕鯨幕ですね。紅白幕と鯨幕が交互にきて、祝いなのか呪いなのかわからないものをつくりたいって言ったんですよ。生と死が混在しているところに美的なものを感じるようなセンスっていうのが日本人の美的感覚にはあるなと思っていて、桜なんかも梶井基次郎じゃないですけど、まさにそういった存在ですよね。生と死のあわいの部分を表現したいと思い、ああいう内容になりました。

―自撮りをするという行為が、日本だけでなく世界中でTwitterやInstagramなどのSNSが出てきたことによりかなりポピュラーになりました。アルバムには「自撮入門(じさつにゅうもん)」という曲も収録されていましたが、お二方自撮りに関してはどう考えていらっしゃいますか?

松永 「病めるアイドル」という曲を前に出したんですが、「自撮入門」はその曲の2014年版だと思っています。アイドル戦国時代があって、誰でもアイドルになれるようになった。誰でもアイドルになれるようになったというのは、誰でもアイドル的にふるまえるようになったということでもあります。自撮りというのはまさにアイドル的にふるまってインスタントに承認欲求を満たせるものですよね。うちのファンの子たちも自撮りをしている子たちが多いですけど、実際いただいた手紙を読んだりすると、彼女たちはとにかくレスが欲しいんらしいんですね(笑)。「自撮入門」はその部分をあえて書いたすごく今時な感じの曲になったと思います。

―あえて「じどり」と読ませずに「じさつ」と読ませたのにはなにか理由が?

松永 それはですね。やっぱり僕は自傷行為と自撮りってすごく似ていると思っているんです。昔、メンヘラの子たちがリストカットをしてそれをアップして「私のことを見てくれ」ってやっていたのと、今の自撮りをアップロードする行為っていうのは方向性がまったく逆のようでいてけっこう近い部分があると思う。「じさつ」という書き方をしていますけど、小さく死ぬことによって自分の中でピリオドを打っていけるというか、自分を作品に変えることができるというか、そういうものとして機能しているんじゃないかなと思っているんですよね。僕は自撮りっていうものが、ある種の彼女たちにとっての作品だと思うし、自撮りをする子たちは別に他人に撮ってもらって写真集とかやんなくても、自撮りで写真集をつくればいいんですよ!と思っちゃうこともあります。

浜崎 誰しも10代のころって黒歴史はあると思うんですけど、いつかは彼女たちが自撮りをアップロードしていた時代というのが黒歴史になるんじゃないかなとは思っていますね。そういう感じの文化なのかなって。

松永 でもいつの時代も同じ部分はあって、プリクラとかと一緒で、自分の可愛いときを残しておきたい、自分の可愛いときを殺して閉じ込めておきたいというのはあるんじゃないですかね。ちなみに僕が高校生の時にはプリント・クラブの他に「写ルンです」を女子高生が買うのが流行っていました。

―今回の歌詞にも「写ルンです」入っていましたね。

松永 当時ミルキーペンというのがあったんです。写真に文字が書けるやつで、それを使って写真をプリクラみたいにデコったりとか、あとはサイン帳の文化とか、プリ帳の文化もありましたね。そういうのがTwitterやTumblrに移行したのかなと考えるとそんなに変わってないのかなとも。それを全世界の人が見ているというのと、友達とのクローズドでやっているというのは大きな違いですけどね。でも、本当に自撮りをしている子たちの行き着く先ってどこなのかなと最近考えますね。

浜崎 行き着かないんじゃない?

松永 最近思うのが、アイドルになりたい子たちとちょっとまたメンタリティが違うのかなと。アイドルになりたい子って、でんぱ組.incもそうですけど意外と体育会系というか、前向きでへこたれないんですよ。ものすごく打たれづよいところがあるかなと思っていて。

浜崎 あとは普通に毎日継続できる体力をもっているかとかそういう感じだと思いますよ。アイドルってライブだったり握手会だったりずっと活動を継続しているわけじゃないですか。そういう継続できる子、一日何枚も自撮りをあげ続けられる子がいたらまた何か変わるかもしれないですね。やっぱり大抵の子たちは波がありますからね。

松永 垢消しというリセットボタンもありますからね(笑)。まぁ昔より構ってもらえるツールが増えたんですよ。僕も自撮りをして承認欲求を得ている側なのでとてもわかります(笑)。自撮りをする子たちのメンタリティーと僕は近いんですよ、自撮りおじさんなんです(笑)。

浜崎 自撮りおじさんだけどアーバンギャルドはずっと活動できてるからそれはなんとかなっているんじゃん?

松永 自撮りおじさんだけど意外とへこたれないんですよ。叩かれると嬉しいみたいな(笑)。いいねをもらえないと逆に嬉しいみたいな(笑)。みんなけっこうそういうところもあったりするのかな?プロになる人ってディスられて嬉しいという感性がないとたぶんできないと思うんですよね。

浜崎 「演奏下手」って言われて「ちくしょーうまくなってやる!」みたいなそういうガッツみたいなものだよね。

松永 最近は褒められるほうが恐怖ですもん。「いやいやいやいやー」ってなっちゃう。

浜崎 自撮りアップしている子たちも見えないところでディスられたりしていて、今の子たちって大変だなと思います。今の男の子の感覚もわからないけど女の子は特に大変だなぁと。

―昔のアーバンギャルドと比べてこれまで一貫してきたことだったり、ここは変わってきたなと思うことはありますか?

浜崎 一貫してきたことは、コンセプトを立てて曲をつくっていくということだと思うんですよ。変わったなということは、みんな考え方が大人になったなと。人の意見がきけるようになったのはもちろんあるし、技術的な面でも当時よりぜんぜん上がっていると思います。最初のころは「アーバンギャルドはこういうものをしたいんだ!」と思って活動していたんですけど、それが最近は自然と身についているというか、何をやってもアーバンギャルドになるんだなとは、これまで活動を続けてきてわかってきたことですね。

松永 これはZiggさん的な切り口になると思うんですけど、アーバンギャルドは「可愛い」ということをテーマにし続けていると思うんです。日本の可愛さというものがある種病んでいるというか、「可愛いは病気」ということを一貫して言ってきているなという気がします。これって日本にしかない美的感覚だと思うんですよね。海外にも「cute」とかあるけどちょっとニュアンスが違うなと。僕は「可愛い」って言葉は「ちょっと足りない」とか「ちょっと歪んでいる」ということなんじゃないのかなと考えていて、アーバンギャルドはその歪みを表現し続けているのかなと。

浜崎 みんな「可愛い!」って言いながら可愛いって思っていなかったりするからね(笑)。だって挨拶みたいなものじゃん、可愛いねって。料理のレシピとかで塩少々とか醤油適量とかあるけど、そんな感じのすごく雑な表現だと思うし、可愛いってなんだろうって考えたときに、もう何の意味のない言葉だったりするんだなと思います。

松永 可愛いって今までの価値観をゆるく脱臼させるものだと思うんですよ。ゆるキャラというものは可愛いの価値をびん乱させたと思うし、もっといえばふなっしーというものはさらにびん乱させていると思うんですよね。だからアーバンギャルドも価値を脱臼していく存在であり続けたいなと思っています。

―最後に何かこのアルバムに向けてあれば一言お願いします!

浜崎 タイトルから見てわかるように今の日本を象徴しているアルバムになったんじゃないかって完成してからすごく思います。一曲目から最後までの流れがすごく自然だと思うし、一周するのが早くてもう一回また繰り返して聴いちゃうみたいな、今のスピード感にあったアルバムに仕上がっていると思います。

松永 僕はぜひ「可愛い」という価値観から「鬱くしい」という価値観へのパラダイムシフトが起こればいいなと思っています(笑)。狙っていきたいけど文字変換しづらいですよね(笑)。

リリース情報

アーバンギャルド「鬱くしい国」

2014年6月18日リリース

収録曲:
1. ワンピース心中
2. さくらメメント
3. 生教育
4. 君にハラキリ
5. ロリィタ服と機関銃
6. 自撮入門
7. アガペーソング
8. ガールズコレクション
9. 戦争を知りたい子供たち feat.大槻ケンヂ
10. R.I.P.スティック
11. 僕が世

【限定盤収録DVD内容】
1.さくらメメント(PROPAGANDA VIDEO)
2.さくらメメント 少女たちを踊らせてみた
3.さくらメメント(PROPAGANDA VIDEO SIDE-B)

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関連サイト

アーバンギャルド公式サイト
http://urbangarde.net/